なんり小児科クリニック

福岡市東区のなんり小児科クリニックの公式サイトです。【院長】南里月美

ニュースレター2010年8月号:気管支喘息

【いま流行している病気は?】
 
現在福岡県で流行している病気は、感染性胃腸炎、手足口病、ヘルパンギーナなど夏のウイルスによるものです。当院では、その他にも、夏には少ないはずの喘息(ぜんそく)の患者さんがしばしば見られます。
暑くなって冷房を使用することが増えてきたことが原因の一つです(締め切った部屋での冷房機から撒き散らされるほこり・乾燥・室外との温度差など気管支への刺激が増加)
今月は喘息について取り上げます。
 
福岡県医師会による感染症発生状況(29週=H22.7.19)
定点における患者数
報告数
前週比
1定点当たりの患者数
福岡県
全国
感染性胃腸炎
503
91
4.19
3.54
手足口病
498
114
4.15
3.94
ヘルパンギーナ
232
79
1.93
6.51
おたふくかぜ
208
120
1.73
1.43
水痘
140
94
1.17
1.24
 
 
【気管支喘息(きかんしぜんそく)】
 
■どんな病気?:
 
気管支喘息は呼気(はき出す息)性の呼吸困難発作を繰り返す病気で、気管支の慢性の炎症を伴っています。吸ったり食べたりしたアレルギーの素(アレルゲン)により気道(空気の通る道)にアレルギー反応が起こります。
 
以下の三つの反応により気道が狭くなり、
ゼーゼーヒューヒュー音=喘鳴(ぜんめい)がきこえて、特に吐く息が苦しくなるのが喘息の大きな特徴です。
①気管支を取り巻く筋肉が収縮する
②粘膜が赤く腫れる(粘膜浮腫)
③気管支からの分泌物(痰)が増える
 
原因アレルゲンは、主として吸入性、ハウスダスト・ダニ・動物の毛・花粉など。食事性で有名なのはそば、そのほか卵・ミルクなど食べて運動すると発作が出ることもあります。煙草の煙・花火・線香・黄砂なども誘因になります。元々喘息の子ども達は、遺伝的にアレルギー体質を持っていることが多く、気管支が刺激に対して敏感に反応してしまう性質があります(気道過敏性)。そのため、風邪をひきやすいですし、鼻炎も起こしやすく、そういう感染症がきっかけで喘息発作を起こしてしまうことがよくあります。
 
 
■発作かどうか・重症かどうか・受診するべきかどうか:
 
・肩で息をする
・息を吸うときに肋間陥凹(肋骨と肋骨の間がくぼむ)
・のどの下がへこむ
・胸と胃の境の辺りがへこむ
・鼻の穴が開く
・横になって寝られない
 
以上は、呼吸が苦しいということのサインですので受診が必要です。
さらには、
 
唇や顔色が悪くなる
・ゼーゼーヒューヒューが逆に音が小さくなる
・意識がもうろうとなる

などの様子が見られれば、緊急入院しなければ命も危ないことになります。
 
 
■治療:
 
1.発作治療
①筋肉の収縮を取る:
気管支拡張剤、内服・吸入・注射・貼付(テープ)など多数あり、重症度・副作用・治療のしやすさ等を考えて選択します。当院では主にツロプテロール製剤(ホクナリン又はそのジェネリック)・キサンチン製剤等を用いています。

②粘膜浮腫を取る・炎症を抑える:
ステロイド剤(吸入、内服、注射)・DSCG(インタール)吸入、キサンチン製剤  

③痰を柔らかくして出しやすくする:
喀痰融解剤(ムコソルバン・ムコダインその他多々)・水分摂取、痰出しが重要。

(④細菌感染が合併している場合は、抗生物質を使用します)
 
2.発作予防
喘息をコントロールするためには、発作が起きた時だけではなく、発作を起こさないようにするための治療が大切です。そのためのいろいろな方法(吸入・内服・環境整備など)があります。軽症の方にとって最も使いやすいのは、内服の化学伝達物質遊離阻止剤(抗ロイトコリエン製剤:キプレス・オノン)で、数ヶ月~数年続けます。重症度に応じて、吸入(DSCG・ステロイド・気管支拡張剤)を組み合わせていきます。
 
 
■ご家庭で気をつけること:
 
◎生活環境を整え、ダニ、ホコリ、カビなどの発作の原因を少なくしましょう。
→→毛布・ぬいぐるみ・カーペットはやめましょう(ハウスダストの巣です)。お布団には掃除機をかけましょう(布団用ノズルが家電量販店等で別売りされています)。エアコンのフィルターや外カバーに掃除機をかけて水洗いしましょう。
◎犬や猫、鳥、ハムスターなどの毛のある動物を飼うのはやめましょう。
◎煙草は厳禁です。
→→喘息の子の目の前で吸わなければいいというわけではありません。吐く息の中にニコチンが大量に含まれています。お子さんに健康に育ってほしいと願うならば、ただちにやめましょう。