【 いま流行っている病気は? 】
感染性胃腸炎、溶連菌感染症(A群溶連菌咽頭炎)が、流行しています。
今年は昨年に比べてノロウイルスの流行がのろく、11月半ばになって幼稚園・保育園などでの嘔吐下痢症の中でそれらしい患者さんが増えて来ました。ノロよりもっと強力で白い便を呈するロタウイルスはまだ少なく、当院での検査では陽性例0です。溶連菌感染症は、11月に入って増えはじめました。とても感染力が強く、子どもだけでなく大人にもうつり、当院でも、家族内感染が多くみられています。のどがとても痛い時要注意です。
福岡県医師会による感染症発生状況
(第47週H23.11.21~11.27) |
病名 |
報告数 |
前週比 |
1定点当たりの患者数 |
福岡県 |
全国 |
感染性胃腸炎 |
746 |
105% |
6.22 |
4.70 |
A群溶連菌咽頭炎 |
304 |
96% |
2.53 |
1.71 |
水痘 |
188 |
129% |
1.57 |
1.44 |
マイコプラズマ肺炎 |
149 |
122% |
1.24 |
1.26 |
流行性耳下腺炎 |
104 |
94% |
0.87 |
0.67 |
突発性発疹 |
86 |
+3 |
0.72 |
0.57 |
インフルエンザ |
62 |
+33 |
0.31 |
0.21 |
【 ノロウイルス 】
症状は下痢や嘔吐、腹痛で、カキなどの二枚貝による食中毒が原因ですが、患者の嘔吐物や便を介しても感染(経口感染)するため、保育園や幼稚園、小学校などでの集団発症することも多いのです。予防には、何よりも手洗いをしっかりすることが大事です。患児の嘔吐物を処理する際には、ビニール手袋やペーパータオル、消毒液を用いて感染を防ぎましょう。
【 ロタウイルス胃腸炎 】
感染性胃腸炎の中で特にロタウイルスは強力な伝染力があり(患者さんの便1g中に数億~数兆個)、しかもわずかな量のウイルスでもどんどん伝染っていきます。嘔吐下痢の症状も重く、経過も長く、乳児期にはもっとも注意すべき嘔吐下痢症といえます。世界中の子供たちが5歳くらいまでに一度はかかり、特に初感染が重症になりやすく、感染するたびに軽症化していきます。
突然の嘔吐に始まり頻回の水様下痢便が続いて、脱水に陥るだけでなく、痙攣発作や脳炎・脳症などの合併症もあり、入院が必要な場合も少なくありません。日本では以前は冬の病気と思われて、「冬季嘔吐下痢症」とか「白色便性下痢症」などという別名もありましたが、最近では冬の終わり~春に流行がずれて来ています。時には夏にもみられることがあり、全世界的にみると一年中注意が必要な病気なのです。
日本での年間死亡は10人未満ですが、小児科医に罹りにくい諸外国では死亡例も重症例も多く(表1)、予防が最重要です。
表1) 世界のロタウイルス患者数 |
|
発症数 |
外来受診数 |
入院時数 |
死亡者数 |
世界全体 |
1億1400万人 |
2400万人 |
240万人 |
61万人 |
アメリカ |
270万人 |
60万人 |
5万5000~7万人 |
20~60人 |
日本 |
120万人 |
79万人 |
7万8000人 |
10人以下 |
(引用)Glass ,et al: Lanset 368: 323, 2006 中込治他:モダンメディア 54(11): 317, 2008 |
【 ロタウイルス経口弱毒生ワクチン(ロタリックス)の販売開始! 】
諸外国では数年前から実施されていて(DPT・ヒブ・肺炎球菌ワクチンなどと一緒に同時接種)入院を要する重症例は以前に比べて激減しています。日本でもようやく今年11月末に承認され発売になりました。ポリオと同じように液体の飲むワクチンです。
接種年齢:
生後6週(1.5か月)~24週(約6か月)の間に4週間の間隔で2回服用します。ワクチンの免疫は一生続く訳ではありませんが、年齢と共に軽症化していきますので、毎年接種する必要はありません。
接種時の注意:
せっかくのワクチンを吐かない様に注意しましょう。飲んですぐにワクチンをほとんど吐いてしまった場合は高価なワクチンを又購入して飲まなければならないことになります。何とか吐かない工夫が必要になりそうですね。
接種前後のミルクは控えた方がいいかも?
価格:輸入のため高価で(14,000円/回)、公費負担に向けて働きかけています。近い将来公費になると信じていますが...
★アメリカで最初に開発されたロタワクチンは腸重積症が多発する副作用があり、中止されました。その後改良を重ねて副作用の少ない今のロタワクチンになりましたが注意は必要です。接種月齢が遅くなると腸重積のリスク増加の可能性があるのではないかという意見もあります(=腸重積の好発月齢に近くなるということも事実)。ともあれ24週までに完了しましょう。
参考文献・HP:
福岡県医師会ホームページ
ロタウイルス感染予防啓発のための学術情報冊子「Double Smile」第2号 (株)メディカルレビュー
ロタウイルス胃腸炎予防ワクチン グラクソ・スミスクライン株式会社/第一三共株式会社