【 いま流行っている病気は? 】
夏かぜのウイルスによる感染症が1位~3位を占めています。
今年の夏は手足口病が記録的に大流行し、ひと夏に2回・3回かかった方もありましたし、発疹が全身に広がったり、大きな水疱が出来て痛みがあったりで、皮疹のひどい方が多いという印象でした。さすがに夏休みも終わりになって大分減ってきていますが、髄膜炎など重症の合併症を起こしてきた方が少なかったのは幸運でした。
その一方で熱が長く続いたり咳がしつこく続くマイコプラズマ肺炎がコンスタントに流行しています。保育園は夏休みは無いので、今でも流行は途切れず続いているようです。今回はこのマイコプラズマ感染症の特集です。
福岡県医師会による感染症発生状況(第34週 (H23.8.22~28) |
病名 |
報告数 |
前週比 |
1定点当たりの患者数 |
福岡県 |
全国 |
感染性胃腸炎 |
445 |
137% |
3.71 |
2.25 |
手足口病 |
218 |
75% |
1.82 |
4.33 |
ヘルパンギーナ |
166 |
102% |
1.38 |
2.13 |
突発性発疹 |
120 |
136% |
1.00 |
0.57 |
流行性耳下腺炎 |
116 |
101% |
0.97 |
0.74 |
水痘 |
96 |
108% |
0.80 |
0.62 |
A群溶連菌咽頭炎 |
83 |
89% |
0.69 |
0.50 |
マイコプラズマ肺炎 |
76 |
89% |
0.63 |
0.74 |
【 マイコプラズマ感染症 】
マイコプラズマとは?:
ウイルスと細菌の中間の性質と大きさを持つ病原体で、マイコプラズマ肺炎と言う名前の通り気管支炎・肺炎を起こします。そのほかには稀に神経炎・髄膜炎・脳炎・関節炎・心筋炎など多彩な病状を引き起こすことがあります。
感染経路:
咳・痰などの飛沫感染。家族内感染や幼稚園・保育園・学校などで感染が広がります。
潜伏期間:
1~3週間、平均2週間前後
感染期間:
咳がひどく出ている間、約2週間
症状:
長く続くひどい咳(はじめ空咳⇒痰がらみの湿ったしつこい咳)発熱・胸痛。年長児では無熱・元気で、咳だけが続
いていることも多く、そのために診断が遅れることがあり、注意が必要です。
診断:
レントゲン撮影で特徴的な肺炎像があり、上記のような症状があれば推測できますが、確定的には血液の中のマイコプラズマ抗体を検査して高値を示すことを証明します。但しこの抗体は病気の初期には低く1~2週間後から上昇してくるので、早期診断には役に立ちません。迅速検査イムノカードマイコプラズマは20分ほどで判明する検査ですが、入院の場合以外は保険適応が無いので、必要な場合は当院負担で実施していますが、やはり早期診断には役に立ちません。
治療:
① 効果のある抗生物質(マクロライドグループ)がありますが、
最近は、耐性菌(薬の効かない菌)が増えていて従来よく効いていた抗生物質(エリスロマイシン・クラリスロマイシン(クラリス・クラリシッド)など)が使えなくなっています。副作用なども考えながら効く薬を選ぶことが重要です(アジスロマイシン(ジスロマック)リカマイシンなど)。
② 咳・痰に対する薬、痰を出しやすくする喀痰融解剤・気管支拡張剤・吸入等
③ 2次感染への治療、マイコプラズマ+細菌(肺炎球菌・インフルエンザ桿菌・溶連菌など)が合併した時は、それぞれの菌への治療で複数の抗生物質が必要なことがあります。
④ 重症の肺炎の場合は入院して、点滴や静脈注射・酸素などの治療が必要です。
予防 :
咳エチケットを守りましょう。発熱なく元気でも咳がひどい時は集団生活は控えましょう。
参考文献:
南山堂・開業医の外来小児科学
医学書院・標準小児科学
日本医師会雑誌vol.122 no.10