なんり小児科クリニック

福岡市東区のなんり小児科クリニックの公式サイトです。【院長】南里月美

ニュースレター2009年6月号:単純ヘルペス歯肉口内炎

【 単純ヘルペス歯肉口内炎とは? 】
単純ヘルペス歯肉口内炎は、乳幼児に最も多くみられる単純ヘルペスの初感染の病気です。単純ヘルペスというウイルスに初めて乳幼児が感染した時に発病します(初感染ヘルペス:写真1)。このヘルペスウイルスはその後体内に残り、神経節の細胞の中に隠れ潜んでいます。そして体の抵抗力が衰えてきた時に、潜伏しているウイルスが活性化し、水疱が口唇周囲(口唇ヘルペス)・鼻の下や入口付近などに水ぶくれ(2,3ヶ)として発症します(再発ヘルペス)。

 


【 症状は? 】
1~5歳児に多くみられ、発熱や歯ぐき(歯肉)の発赤・腫れ・痛み・歯磨きをすると出血するなどの歯肉炎をおこします。舌・口の中・口唇周囲に水疱ができたり、小さい児なら、よだれがひどくなって食べられなくなります。熱が下がって口内炎の症状が治まるまでは、1~2週間かかります。初めての感染でこれらの症状が現れるのは、10%前後と言われていて、残りは無症状でかかってしまいます(不顕性感染)。初感染で最も多いのは歯肉口内炎ですが、その他にも、ヘルペス性湿疹(全身型・部分型)、ヘルペス脳炎などは稀ですが重症です。


【 感染経路は? 】
保育園や幼稚園で歯肉口内炎のお友達や、家族の人の再発ヘルペスなどからウイルスをもらって発症します。


【 家庭で気をつけることは? 】
1.熱が高いとき                                                   
高熱が出るということは、体がウイルスと闘っている証拠でもありますから、無理に熱を下げる必要はありません。でも、きつくて苦しそうにしている時・夜眠れそうにない時・食べ物・水分をとれない時は、解熱剤を使って楽にしてあげるのもいいでしょう。また、冷やすなら両脇の下や首・足のつけ根(大きい血管が皮膚の近くにある場所)が効果的です。

2.食べられないとき
単純ヘルペス歯肉口内炎は、特に口の中の痛みが強いため、食欲があっても飲んだり食べたりが困難です。塩味や酸味など刺激のない食べ物や飲み物を噛まずに飲み込める形で少しずつ何回かに分けて与えるようにしましょう。柔らかい歯ブラシやガーゼで歯茎にあたらない様に歯磨きをし、うがいを頻繁にして口の中を清潔に保ちましょう。うがいの出来ない小さいこどもなら、水やお茶を飲ませて少しでも口の中をきれいにしましょう。

3.触らないことが大切
唾液には、たくさんのウイルスが生きています。口の中に指を入れたり水疱を触った手で体の他の部分を触ると、そこに又ウイルスが病変をつくります。口に入れたりなめたりするおもちゃを通じて感染することもあるので注意しましょう。

4.日常生活の注意は
歯肉の発赤・腫れがひどく高熱が出ている時は、ウイルスの活動が非常に活発で人にうつし易いので家族内でも要注意です。熱が下がり見かけは元気そうでも歯肉の症状が残っているときは、抵抗力はかなり落ちていて伝染力も残っていますので、外出を控えなるべく安静に過ごすように心がけましょう。


【 治療は? 】
抗ウイルス薬(ヘルペスウイルスの増殖を抑える薬)を内服します。早い時期の治療開始が最も重要です。水分の補給に努め十分飲めなければ、点滴が必要な場合もあります。発熱や痛みには解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン:カロナールやアンヒバなど)を用います。「あれ、よだれも多いし歯茎が赤いな?」と感じたら、早めに受診して下さい。                   


引用文献:「赤ちゃんの病気大百科」・「開業医の外来小児科学」・浅野喜造著「こどもの皮膚疾患」