なんり小児科クリニック

福岡市東区のなんり小児科クリニックの公式サイトです。【院長】南里月美

気管支喘息(ぜんそく):特徴・発作・原因・治療・予防・対処法

【 どんな病気? 】

 気管支喘息は呼気(はき出す息)性の呼吸困難発作を繰り返す病気で、気管支の慢性の炎症を伴っています。吸ったり食べたりしたアレルギーの素(アレルゲン)により気道(空気の通る道)にアレルギー反応が起こります。
 
以下の三つの反応により気道が狭くなり、
ゼーゼーヒューヒュー音=喘鳴(ぜんめい)がきこえて、特に吐く息が苦しくなるのが喘息の大きな特徴です。
①気管支を取り巻く筋肉が収縮する
②粘膜が赤く腫れる(粘膜浮腫)
③気管支からの分泌物(痰)が増える
 
原因アレルゲンは、主として吸入性、ハウスダスト・ダニ・動物の毛・花粉など。食事性で有名なのはそば、そのほか卵・ミルクなど食べて運動すると発作が出ることもあります。煙草の煙・花火・線香・黄砂なども誘因になります。元々喘息の子ども達は、遺伝的にアレルギー体質を持っていることが多く、気管支が刺激に対して敏感に反応してしまう性質があります(気道過敏性)。そのため、風邪をひきやすいですし、鼻炎も起こしやすく、そういう感染症がきっかけで喘息発作を起こしてしまうことがよくあります。
 
 
【 発作かどうか・重症かどうか・受診するべきかどうか 】
 
・肩で息をする
・息を吸うときに肋間陥凹(肋骨と肋骨の間がくぼむ)
・のどの下がへこむ
・胸と胃の境の辺りがへこむ
・鼻の穴が開く
・横になって寝られない
 
以上は、呼吸が苦しいということのサインですので受診が必要です。
さらには、
 
唇や顔色が悪くなる
・ゼーゼーヒューヒューが逆に音が小さくなる
・意識がもうろうとなる

などの様子が見られれば、緊急入院しなければ命も危ないことになります。
 
 
【 治療 】
 
1.発作治療
①筋肉の収縮を取る:
気管支拡張剤、内服・吸入・注射・貼付(テープ)など多数あり、重症度・副作用・治療のしやすさ等を考えて選択します。当院では主にツロプテロール製剤(ホクナリン又はそのジェネリック)・キサンチン製剤等を用いています。

②粘膜浮腫を取る・炎症を抑える:
ステロイド剤(吸入、内服、注射)・DSCG(インタール)吸入、キサンチン製剤  

③痰を柔らかくして出しやすくする:
喀痰融解剤(ムコソルバン・ムコダインその他多々)・水分摂取、痰出しが重要。

(④細菌感染が合併している場合は、抗生物質を使用します)
 
2.発作予防
喘息をコントロールするためには、発作が起きた時だけではなく、発作を起こさないようにするための治療が大切です。そのためのいろいろな方法(吸入・内服・環境整備など)があります。軽症の方にとって最も使いやすいのは、内服の化学伝達物質遊離阻止剤(抗ロイトコリエン製剤:キプレス・オノン)で、数ヶ月~数年続けます。重症度に応じて、吸入(DSCG・ステロイド・気管支拡張剤)を組み合わせていきます。
 
 
【 ご家庭で気をつけること 】
 
◎生活環境を整え、ダニ、ホコリ、カビなどの発作の原因を少なくしましょう。
→→毛布・ぬいぐるみ・カーペットはやめましょう(ハウスダストの巣です)。お布団には掃除機をかけましょう(布団用ノズルが家電量販店等で別売りされています)。エアコンのフィルターや外カバーに掃除機をかけて水洗いしましょう。
◎犬や猫、鳥、ハムスターなどの毛のある動物を飼うのはやめましょう。
◎煙草は厳禁です。
→→喘息の子の目の前で吸わなければいいというわけではありません。吐く息の中にニコチンが大量に含まれています。お子さんに健康に育ってほしいと願うならば、ただちにやめましょう。





【 喘息発作とは? 】


発作はその重さの順に3段階に分けられます。
 
小発作
ふつうに遊び、会話や食事をし、眠ってはいるものの、軽い喘鳴(ゼイゼイヒューヒューという呼吸)や咳がみられる。  
 
中発作
話しかければ返事はしますが、動きが悪く、食欲が落ち、夜中に何度か呼吸困難のために目をさます。喘鳴や陥没呼吸(※)がみられる。
※陥没呼吸=息を吸うときに肋間陥凹(肋骨と肋骨の間がくぼむ)・のどの下がへこむ・胸と胃の境の辺りがへこむ等が見られる呼吸のこと
 
大発作
動くどころではなく、話しかけても返事ができず、食事もできなくなり、夜は横になれず(起坐呼吸)、座り込んで小鼻をぴくぴくさせ、肩で呼吸する様子がみられる。陥没呼吸、呼吸困難が強く、顔色、唇の色も悪く、喘鳴音は逆に弱くなります。大変危険な状態です。
 
 
◎発作の起こりやすい時間と時期:
一日のうちでは、夕方から明け方にかけて起こる場合が多いです。特に、夜間の就寝後2~3時間してから起こることが多く、午前2~4時ぐらいがピークとなります。夜の発作は悪化しやすい傾向にあります。発作の起こりやすい時期は、季節の変わり目で、とくに9~10月がもっとも発作が多発します。
 

 
  
【 ご家庭での救急処置について 】
 
基本的対処法

①楽な姿勢にさせる。
衣類はゆるめ、襟もとは広くあけ、座布団などで背もたれを作り座らせてあげてください。赤ちゃんは縦抱きにすると楽になります。
②安静にして、水分をこまめに与える(水分が不足すると痰が固くなり痰が出にくくなります)
③腹式呼吸で深く息を吸い、しばらく息を止めて咳を誘発し、痰出しをする。
前かがみにして背中を叩いてあげたり、頭・胸を低くすると、痰が出やすくなります(右図参照)。


薬による対処法

予備として処方されている薬があれば、使いましょう。 
◎痰を柔らかくする薬(内服)・気管支拡張剤(内服または貼付;○○テープ)
◎吸入薬(吸入器がある場合は、発作時に使用。必ず指示容量を守って使用すること。)
 
※以上の対処をしても夜に苦しくて何度も起きるときは、朝少し治まっていてもまず受診してください。その後、可能であれば登園・登校しましょう。また、唇や顔色が悪くなる・冷や汗がでる・ゼーゼーヒューヒューが逆に音が小さくなる・意識がもうろうとなる等の様子が見られれば、緊急に受診が必要です。                     


【 喘息発作を引き起こす原因 】

◎動物の毛(猫、犬、鳥、ハムスター、うさぎなど)
◎タバコの煙
◎けむり(花火、たき火、線香)
◎ベッドや枕のホコリ(ダニ)
◎掃除のときにでるホコリ
◎強いにおいのするものや、スプレー
◎天気の変化
◎風邪
◎激しいスポーツ、過労

※これらのものは喘息の誘発因子(増悪因子)と呼ばれています。


 
 
【 発作予防のためにできること 】

◎ぬいぐるみ・絨毯はやめ、ふとんに布団用ノズルで掃除機をかける。毛布は使わない。
◎毛のあるペット(犬・猫・小鳥)は飼わない。タバコはやめましょう。  
◎運動誘発喘息(ランニング等で喘息が誘発される場合)が起こるときは、運動前に薬や吸入剤で予防する。(南里)
 
 
 
参照文献HP:小児ぜんそくの正しい知識(南江堂ヘルスガイド)・子どもの喘息(監修古庄巻史)・小児気管支ぜんそく家庭でのケア(監修馬場実)・福岡県医師会HP