なんり小児科クリニック

福岡市東区のなんり小児科クリニックの公式サイトです。【院長】南里月美

ニュースレター2012年12月号:日本脳炎ワクチン接種後死亡2例の検討・4種混合ワクチンも不活化ポリオも入手難

【 いま流行っている病気は? 】
 
前号に引き続き嘔吐・下痢の感染性胃腸炎、特にノロウイルスが増加中です。テレビニュースでも話題になっていますが、全国的にも、食中毒や集団感染が増えて来ています。ロタウイルスは時に見られる程度で、例年、年明けて増えてきます。乳児期は特に重症化しやすいので要注意です。生後2か月以降6か月まではロタのワクチンがありますが、ノロはワクチンも特効薬もないので、石鹸での手洗い・うがいなどとても大事です。
 
溶連菌感染症も冬場に多い病気です。強いのどの痛みの時は治療が必要な溶連菌感染症か、又は自然治癒を待つしかないウイルス感染症か、区別する必要があります。感染力は強く、菌の消失もかなり頑固で、家族内では特に兄弟姉妹がうつってしまうことが多くあります。未治療の場合には更なる感染の広がりや再発につながることも多いので、のど粘液の迅速検査で早期診断し、しっかり治療することが大事です。
手足口病は本来夏に多い病気ですが、今保育園などで流行しています。硬い水疱様の発疹が手足口だけでなく、腿やおしり・腕にも数多く出現しますが、基本は自然治癒です。
 
最近急に増えて来たのはクループで、夕方から突然声が嗄れ、夜にひどくなりケンケンと言う特有の変な咳(犬吠様咳嗽・オットセイが泣くような咳)が出現します。のどの奥の喉頭が炎症を起こし、腫れて空気の通り道が狭くなると呼吸困難に陥ります。暖かい湿った空気を吸うことで少し楽になりますが、苦しくて眠れない時は急患センターでの吸入がお勧めです。
 
福岡県医師会による感染症発生状況 (第43週H24.11.19~11.25)
病名 報告数 前週比 1定点当たりの患者数
福岡県 全国
インフルエンザ 23 +0 0.12 0.14
感染性胃腸炎  1993 83% 16.61 11.39
A群溶連菌咽頭炎    223 115 1.86 1.66
水痘   205 109 1.71   1.28
流行性耳下腺炎    75 109 0.63 0.33
手足口病    37 +2 0.31 0.55
 
 
 
 
【 日本脳炎ワクチン接種後死亡2例の検討 】
 
日本脳炎ワクチン接種後の死亡例が2例(7月と10月)報告され話題になりました。厚労省予防接種委員会が検討して発表したのは、「因果関係は不明、その他の要因や常用していた内服薬の相互作用による可能性もあり、引き続き調査する」との内容でした。

日脳ワクチンには2種類あり、死亡した2例とも同じメーカーのもので、偶然かどうか不明ですが、当院では取り敢えず別種類のものを使用しています。又、委員会の更なる調査結果が出ることも期待して、新たに始める方・追加接種などの方には、今年は延期して来年夏前の時期をお勧めしています。
 
 
 
【 4種混合ワクチン[3種混合(DPT)・不活化ポリオ(IPV)]もIPV単独も入手難 】
 
4種混合ワクチン(3種混合DPT+不活化ポリオ IPV、4種類で0.5㏄1本)の定期接種が始まったのもつかの間、入荷できなくなりました。ポリオ単独(IPV)も入手難になり、新たに予約をして頂いている場合は3回分を確保した上で接種開始しますので、なかなか順番が回ってこないのが現状です。

ポリオはナイジェリア・パキスタン・アフガニスタンなどのポリオ常在国に行く予定が無ければ、あまり急ぐ必要はないとも言えます(お隣の中国は23年には2名死亡を含む21名の野生株ポリオ発症、10月以降報告なし)。やむを得ませんので、当面3種混合(DPT)だけでも、受けておかれた方が良いでしょう。
 
 
 
【 今年のインフルエンザは? 】
 
上の表にもありますように、福岡市ではまだそれほど流行は見られていませんが、北九州ではそろそろ流行が始まったようで、当院では2週間ほど前にインフルエンザのきょうだい2人を診療しました。北九州から博多に来て早々に発症されましたが、タミフルが良く効いて元気になりました。その後は高熱の方に時々インフルエンザの検査をしますがまだ陽性の方はありません。

今年の夏には沖縄・鹿児島でインフルエンザA(H1N1)の小流行がありましたので、例年よりすこし流行が早いかもしれません。又新型パンデミックインフルエンザもいつ発生しても不思議はないといわれ、常に要注意です。
 
 

参考文献:
インフルエンザQ&A・厚労省ホームページ・予防接種ガイドライン2012