なんり小児科クリニック

福岡市東区のなんり小児科クリニックの公式サイトです。【院長】南里月美

ニュースレター2009年8月号:ウイルス性髄膜炎

【 ウイルス性髄膜炎とは? 】
髄膜炎は(脳膜炎という方がわかり易いかもしれませんが)、脳の表面や脊髄をおおっている髄膜に、ウイルスや細菌による病原体が感染して炎症を起こす病気です。
感染経路は、咽頭炎・扁桃炎などのウイルスや菌が、血液の中に入り込んで髄膜に達して感染をおこす場合と、時には副鼻腔炎・中耳炎などの隣接した器官の病変から直接髄膜に侵入し感染することもあります。
髄膜炎はウイルス性髄膜炎(無菌性髄膜炎ともいいます)と、細菌性髄膜炎に大別されます。細菌性髄膜炎は重症で、脳に障害を残すことが多く命を落とす場合もあります。一方、ウイルス性髄膜炎は多発しますが、細菌性髄膜炎に比べると症状は軽く、基本的には自然に治る病気です。今回は、夏季に多い“ウイルス性髄膜炎”をとりあげてみました。
 

【 ウイルス性髄膜炎をおこす主なウイルス 】 

 
1.エンテロウイルス: おもに夏風邪や腸炎、手足口病、ヘルパンギーナなどをおこすウイルスです。                                         
(他にもエコーウイルス・コクサッキーウイルスなどがあります)
2.アデノウイルス: 扁桃炎、咽頭炎、結膜炎、腸炎などをおこすウイルスです。
3.ムンプスウイルス: 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)ウイルスです。
4.その他: インフルエンザやヘルペス属ウイルス(水痘や単純ヘルペスなど)でもおこるこ
とがあります。                                                


 

【 症状(三大兆候) 】
1.発熱: 通常は38~40度の高い熱が出ますが、低い場合もあります。
2.頭痛: ひどい頭痛がみられます。また首が硬く、痛くて曲げられなくなることもあります。
 (言葉で訴えることが出来ない乳児では、機嫌が悪くなったりします)
3.吐き気・嘔吐: 食欲も低下し、脱水症になることがあります。
 又、脳圧が高くなっているので大泉門がまだ開いている乳児では、大泉門がふくらむことがあります。
 
 

【 治療 】
 

1.解熱剤・痛み止め・吐き気止め・点滴による補液など、症状に応じた治療を行います。
2.基本的にはゆっくりと安静にしながら自然回復を待ちます。
3.腰から針を刺し(腰椎穿刺)、少量の髄液を採取して検査し診断が確定します。この検査をすることで頭痛、吐き気などの症状が軽くなります。(診断的治療)
 
★髄液: 髄膜と脳・脊髄のあいだは髄液で満たされています。
髄液は脳および脊髄を外力から保護するのに役だちます。
また、栄養を補給し老廃物を運ぶなど、絶えず循環しています。
髄液は髄膜炎の診断や治療に重要な関わりがあります。  
 

 

【 予防や注意することは? 】
※ウイルス性髄膜炎は夏に多くみられます。今年の夏も風邪や手足口病が流行中ですが、このような病気のときは、特に炎天下での運動や外出を控え、できるだけ室内で静かに過ごしましょう。病気を長引かせ、悪化させないことが髄膜炎の発症予防につながります。



<参考文献>
子どもの病気の地図帳(講談社)