なんり小児科クリニック

福岡市東区のなんり小児科クリニックの公式サイトです。【院長】南里月美

ニュースレター2012年5月号:ポリオ不活化ワクチン開始

【 いま流行っている病気は? 】 
 
 新学期が始まり、お花や緑のきれいな季節になりました。皆さん元気で学校・幼稚園・保育園に通っていますか?入園して早速病気をもらって、寝込んでしまった子ども達も多いことでしょう。5月の連休で元気を回復して、また楽しく通園・通学してくださいね。
 インフルエンザが1月以来初めて感染性胃腸炎にトップの座を明け渡しました。インフルエンザは、4月に入ってゆるやかに減り続けてはいますが(前号から2839→2275→1445→1664→1584 )、4月後半に入ってからはむしろ増加しています。ほとんどがB型で、タミフル・イナビルなど抗インフルエンザ薬耐性も見られますが、当院では重篤な合併症をきたした方はありません。ロタウイルスの感染性胃腸炎は大流行で脱水に陥り点滴をする方も増えています。溶連菌・水痘・おたふくかぜも相変わらず流行中。虫がぞろぞろ出てくる春の陽気は、ウイルス・細菌も元気になるものが多いと認識下さい。
 
福岡県医師会による感染症発生状況 (第16週H24.4.16~4.22)
病名 報告数 前週比 1定点当たりの患者数
福岡県 全国
インフルエンザ 1589 95% 8.03 5.56
感染性胃腸炎 1464 86% 12.20 9.60
A群溶連菌咽頭炎 252 111% 2.10 1.78
水痘 211 104% 1.76 1.12
流行性耳下腺炎 111 106% 0.92 0.47
突発性発疹 98 105% 0.82 0.55
 
 
 
 
【 ようやく!!不活化ポリオワクチン注射(IPV)開始9月から!厚労省4月末に承認 】 
 
 日本でもようやくこの9月1日から、不活化ポリオワクチン(IPV)の定期接種(=無料)が始まります。経口生ポリオワクチン(OPV)の2回がIPV 4回接種に増え、DPT(ジフテリア・百日咳・破傷風)と同じ1期3回と追加の4回、接種年齢も同じです。


★ ポリオIPV接種要綱(厚生労働省発表) ★
IPV(単独・4種混合ともに)接種年齢・間隔:DPTと同じ
年齢:1期3回は生後3~12か月未満
    1期追加接種(4回目)は1期接種終了後12~18か月未満
間隔:1期3回の各々は3~8週間あける。

 ※既接種者への対応
 DPT既接種者・OPV1回既接種者・個人輸入IPV既接種者などは接種間隔を考慮出来る。
 単独IPVは56日以上(8週間以上)の間隔を空けても接種可能とする。
 (9月以降3年程度に限る)
 ① DPT既接種・OPV0回の人:原則として単独IPV4回接種
 ② DPT既接種・OPV接種1回の人:単独IPV3回
 ③ DPT既接種(未終了)の人 :残りの接種は原則として単独IPVとDPT
 ④ 個人輸入IPV既接種(未終了)の人:残りの接種は原則として単独IPVとDPT
 
 
 
【 ところで「ポリオ」ってどんな病気? 】
 
◆原因:
患者の便中のポリオウイルス、手や食べ物から口→のど・腸で増殖して、血液→中枢神経・脊髄(に達する場合があります)
 
◆症状:
ほとんど(90%)は無症状、あっても夏かぜ様で、微熱・咽頭痛・頭痛・倦怠感などがみられます。進行すると高熱・吐き気・頭痛など髄膜炎症状(5~10%)、さらに進行すると手足の麻痺がおこり後遺症を残します。もっと進行すると、脳神経や呼吸麻痺をおこし死に至ります。ほとんどが子どもの患者だったことから小児麻痺と言われました。
 
◆ポリオワクチンの歴史:
1960年日本でポリオが大流行し、患者数は5000人超、麻痺の後遺症や死亡者が多発した際、生ポリオワクチンの緊急輸入・全国一斉接種によって劇的に終息しました。1961年に始まった経口生ポリオワクチン(OPV;ポリオウイルスを弱毒化したもの)は飲むシロップでポリオ患者は激減し、1981年以降は日本国内の発症者は0になりました。しかしこのワクチンは 接種した子だけでなく周りの子も便からのワクチンウイルスに感染して麻痺を起す可能性があることがわかり(国内のワクチン関連麻痺は2001~2010年の10年間で15人;100万人に約1.4人、初回男児に多い)、その為、不活化ポリオワクチン(IPV)の開発が進み、欧米では10年以上前からIPVに変わり、重大な副反応は出ていません。
世界的に有名なバイオリニストのパールマンもポリオによる片足の完全麻痺でいつも座って演奏しています。
 
 
 
【 [DPT +IPV(不活化ポリオワクチン)]の4種混合も始まる予定*11月? 】

IPV(不活化ポリオワクチン)は注射なので他のワクチンとの併用または混合ワクチンにすることが可能です。11月から予定されているのは、DPTとIPVとの4種混合の国産ワクチン!このワクチンの製造に使用されるのは弱毒の生ワクチン株(日本以外では強力な野生株を使ったワクチン)なので、世界からも注目されています。また欧米ではこの4種に加えてヒブ・B型肝炎ワクチンとの6種混合ワクチンが使われていますし、日本でも近い将来、痛みは1本だけというワクチンが出来ることを期待しましょう。
 
★これまで日本では100%近いワクチン接種率で予防されていたからこそポリオの発症が抑えられてきたのですが、世界的(アフリカなど)にはかなりの発症があり、この1~2年の接種率の低下(2011年70~80%、2012年はさらに↓)は心配です。未だ免疫のない子ども達が、9月までどうぞ無事に過ごせますように。 



参考文献・HP:
小児科診療・第75巻4号(中野貴司)
第3回厚労省不活化ワクチン検討会 
福岡県医師会ホームページ