なんり小児科クリニック

福岡市東区のなんり小児科クリニックの公式サイトです。【院長】南里月美

ニュースレター2012年2月号:インフルエンザ

【 いま流行っている病気は? 】
 
 インフルエンザは、全国的にも福岡県でも1月に入ってすごい勢いで流行しています。毎週倍増し(前号から131→294→479→1016→3399)、ほとんどがA型ですが(多くはA香港型(A・H3N2))B型も混在しています。福岡市でも(東区でも)幼稚園や小学校で学級閉鎖が相次いでいます。
 流行が始まったからもうワクチンは間に合わないと思ってはいませんか?流行の期間はまだまだ続きますし、A型は2種類(H1N1は2年前に流行ったもの)ありB型もあり、ワクチンはその3種をカバーしています。ワクチンを受けたのにかかる方もありますが確実に軽く済みます。子どもが苦しまずに元気に過ごせるのは何よりも嬉しいことです。まだの方は今からでも間に合います。どうぞお急ぎください。

福岡県医師会による感染症発生状況
(第3週H24.1.16~1.22)
病名 報告数 前週比 1定点当たりの患者数
福岡県 全国
インフルエンザ 3399 335% 17.17 7.33
感染性胃腸炎 1591 119% 13.26 9.87
A群溶連菌咽頭炎 414 142% 3.45 1.51
水痘 242 88% 2.02 2.18
RSウイルス感染症 112 129% 0.93 0.69
流行性耳下腺炎 103 87% 0.86 0.69
 

 
 
 
【 インフルエンザの症状・診断検査・治療 】
 
 早期診断検査も治療薬もなかったころのインフルエンザは、死亡率の高い恐ろしい病気でした。20世紀最大のインフルエンザ流行は「スペインかぜ」と言われ世界中では数千万人、日本でも数十万人の死者が出ました。もっと昔にはナポレオンが冬、ロシアに敗北して撤退したのはインフルエンザの流行で多くの兵士が命を落としたのが大きな敗因だったと言われています。
 医学の発達により今はワクチンで予防し、罹っても迅速診断キットで早期診断し治療薬で翌日に解熱し元気になる結構な世の中になりました。でもその中でやはり高齢者の死亡数は増加し、小児では脳炎・脳症で死亡したり後遺症を残す不幸な例もあり、決して侮ってはなりません。治療薬の耐性も問題になっています。また、強力な新型インフルエンザの出現も常に危ぶまれています。
 

◆症状◆
(典型的・ワクチンをしてない場合)突然の高熱・頭痛・節々の痛み・だるさ
嘔吐・下痢・腹痛も時々あります。ワクチンをした方では37.5℃~38℃台程度で比較的元気ですが頭痛はほとんど全員にあり、検査オーダーの目安にしています。
 

◆検査◆
普通の血液の検査(白血球数などの炎症反応)では参考程度にしか役に立ちません。迅速診断キットで直接ウイルスの有無を調べるのが最も有用です。
診断にはある程度のウイルスの量が必要なので、発熱直後に受診されても、結果陰性で翌日に又再検査ということになる場合があります。8~12時間経過していればかなりの確率で陽性になります。又、この数年迅速診断キットは多数開発され、年々精度が良くなっています。ごく最近では発症直後にも診断可能な方法が開発され(理化学研究所)、近い将来実用化されると期待しています。
 

◆治療◆
薬の詳細は2011年2月ニュースレターに取り上げていますので参照ください。
 
タミフル:内服薬、(カプセル・ドライシロップ1日2回5日間)全世界で最も多く処方され、耐性ウイルスも少しずつ出現していますが、小児でも飲みやすく使いやすい薬です。今年私が処方した方たちは全員翌日(2回~3回の内服後)にはすっかり熱も引き元気になってとても良く効いている印象です。
リレンザ:吸入薬1日2回5日間
イナビル:吸入薬1度だけ、薬局でⅠ~2吸入
ラピアクタ:点滴薬1回のみ、薬が飲めず脱水があり点滴の必要な方は有用
 

◆タミフルの処方について◆
 タミフルは副作用として幻覚・異常行動などで転落や事故での死亡数例の報告が問題になり、2007年より10代には原則として処方しないことになりました。しかし幻覚・異常行動は、薬を飲む前や飲んでない人、又ほかの治療薬でも出現することがあり、因果関係は不明と言われています。いずれにしても発症2日間はしっかり見守る必要があります。
 当院では希望される方には同意書の署名を頂いて処方します。解熱しても直ちにウイルスが消滅する訳ではなく、感染力もありますので薬は最後までしっかり飲みましょう。
 
 
参考文献・HP: 小児科診療2000.12 福岡県医師会ホームページ