なんり小児科クリニック

福岡市東区のなんり小児科クリニックの公式サイトです。【院長】南里月美

ニュースレター2011年10月号:2つの子宮頸がんワクチン「サーバリックス」と「ガーダシル」

 今年は夏休みから9月と子宮頸がんワクチンの接種を受ける方々(中学Ⅰ~高2女子)が多く見えています。以前はよく病気で来院されていた小さいお子さん達が、久しぶりにお会いすると皆さん素敵なお嬢様に成長されていて、嬉しい驚きの毎日です。その子宮頸癌ワクチンがもう一つ9月15日に新しく承認されて2種類になりました。それぞれのワクチンには互換性はなく、3回とも同じもので統一して接種しなければなりません。それぞれ一長一短あり、どちらを選ぶか迷うところです。今月はこの2つのワクチン「サーバリックス」と「ガーダシル」の特集です。
 
 
【 子宮頸がんとは 】
 子宮に発生する癌の中で特に頸部(子宮の入り口付近)に出来る悪性腫瘍で、女性では乳がんの次に多く、最近は20歳代の若年層に増加がみられています。子宮頸癌は初期にはあまり症状が無く、早期がんとして見つかる場合はほとんど検診によるもので、血液の混じったおりものなどの症状が出現するときはかなり進行した状態なのでその場合の治療はほとんどが子宮摘出ということになります。子宮がん検診が重要な所以ですね。
 
 原因はヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染によることがわかっています。性交渉により一過性感染を受けた多くの女性の中で特に長期にわたって持続感染した場合に発症します。HPVには100種類以上の型がありますが、そのうち子宮頸がんにかかわるものは約15種類あり(HPV16・18・31・33・35・45・52・58など)中でも16・18型の2種類で子宮頸がんの約70%を占めています。唯一ワクチンで予防可能な癌なのです。
 
◆サーバリックス(GSK社製):
HPV16・18の2種類のウイルスに対する免疫が得られる(2価ワクチン)。それだけでなくHPV31・33・45にもクロスプロテクション(交差予防効果)を持っていることが判明している。
初回・2回目(1か月後)・3回目(2回目から5か月後)の3回・6か月間で完了。
 
◆ガーダシル(MSD社製):
HPV16・18に加えて尖圭コンジローマ(陰部の良性のいぼ)の原因ウイルスであるHPV6・11の免疫も得られる(4価ワクチン)。HPV31・33・45への交差予防効果もあるといわれている。
初回・2回目(2か月後)・3回目(2回目から4か月後)の3回・6か月間で完了。
 
 
 
【 2つのワクチンの比較 】
今後どれだけ長期間有効かが一番大事な比較点だと思いますが、日本では2009年承認されまだ2年足らず、世界でも先発のオーストラリアでは2007年に始まってまだ4年ですので、現時点では抗体の持続曲線から推測するしかありません。どちらのワクチンも20年~30年は効果が持続するのではないかと言われていますが、抗体価比較表を見ると(下図)、サーバリックスの方が高い抗体価を維持できるのではないかと私は考えています。


 



【 当院の方針 】
良性のいぼへの効果もあった方が良いのは勿論ですが、要は癌に対する効果が何より大事ではないでしょうか。当院では、混乱したり間違いのもとになったりすることの無いように、「サーバリックス」1種類のみ取り扱うことに致しました。どうぞご理解くださいます様お願い致します。

 
 
参考文献:産科と婦人科別冊Vol.78No.5  Chatterjee A :Comparative immunogenicity of two prophylactic human papillomavirus vaccines :results through month 24. Abstract presented at the 26th International Papillomavirus Conference. Montreal, Canada, 3-8 July 2010.