なんり小児科クリニック

福岡市東区のなんり小児科クリニックの公式サイトです。【院長】南里月美

ニュースレター2011年6月号:食中毒

【 いま流行っている病気は? 】

感染性胃腸炎、溶連菌感染症、手足口病などが流行しています。手足口病は夏に多い病気で、今後も増えることが予想されます。インフルエンザは減少し、そのほとんどはB型です。
 
福岡県医師会による感染症発生状況(20週=H23.5.16~5.22)
病名
報告数
前週比
1定点当たりの患者数
福岡県
全国
感染性胃腸炎
810
92%
6.75
6.63
A群溶連菌咽頭炎
352
124%
2.93
2.14
手足口病
347
334%
2.89
0.31
インフルエンザ
305
69%
1.54
1.97
水痘
269
60%
2.24
2.03
 
 
【 食中毒について 】

4月末に北陸地方を中心に展開する焼き肉チェーン店で集団食中毒が発生し、ユッケを食べた方数名が亡くなられる事件がありました。生肉や加熱不十分な肉を食べると、腸管出血性大腸菌O―111やO―157による食中毒のリスクがあり、死に至る危険性もあります。細菌性食中毒は夏に多いと思われがちですが、この梅雨の時期から増える傾向にあります。これは、細菌が高温多湿を好み、6~9月にかけて増殖が活発になるためです。今月は食中毒について取り上げます。
 
食中毒を起こす病原菌の種類
キャンピロバクター
、牛、豚の腸管に常在している菌なので、肉に付着する菌をゼロにすることは非常に難しい。低温環境に強いため、冷凍しても死滅しないが、熱には弱いので、十分加熱して食べれば安全。
トリ刺し、焼き鳥、卵かけご飯、半熟卵、目玉焼き、すき焼きの付け卵などから感染する子どもが多い。
★症状 ⇒ 腹痛、発熱、下痢、嘔吐のほか、血便が出る。 
★潜伏期間 ⇒ 2日~5日
病原性大腸菌
(O-111や
O-157など)
加熱不十分の牛肉、ユッケ・レバ刺しなどの生肉、生肉に触れた野菜、調理器具から感染することが多い。
★症状 ⇒激しい腹痛、吐き気、嘔吐、下痢。血便になることも多く、重症の場合は溶血性尿毒症症候群となり、乳幼児の場合は、急性腎不全や急性脳症を起こして死亡する例もあります。  
★潜伏期間 ⇒ 10~60時間
ブドウ球菌
人の皮膚や鼻の粘膜に存在するため、料理する人の手の化膿した傷口を介して食品に付随することが多い。
細菌のついた魚介類、肉の加工品、折り詰め弁当、おにぎりやサンドイッチなどから感染する。
★症状⇒激しい嘔吐、下痢、腹痛  
★潜伏期間⇒1~6時間
腸炎ビブリオ
夏場、海水の温度が高くなると繁殖して魚介類を汚染するため、その魚介類のお刺身や塩漬けから感染する。また、それらを調理したまな板や包丁を使って調理した食品を食べることで二次感染を起こすこともある。  
★症状⇒発熱、下痢、嘔吐  
★潜伏期間 ⇒ 8~20時間 
サルモネラ菌
(非チフス性)
ミドリガメ・犬・ネコなどのペットや、肉、生卵、乳製品などから感染し、重症化することが多い。
主に夏~秋にかけて発生する。  
★症状⇒発熱、腹痛、下痢(血便)  
★潜伏期間 ⇒ 半日~1日
ボツリヌス菌
空気のないところを好むため、密封食品などから感染。古いハムやソーセージ、缶詰などが感染源。
★症状 ⇒ 下痢、嘔吐、腹痛などに次いで、めまいや頭痛など  
★潜伏期間 ⇒ 半日~1日
 
 
 
【 食中毒を予防するには 】 

食中毒を防ぐ三大原則は、原因となる細菌やウイルスを、「付けない・増やさない・やっつける」ことです。

1.「付けない」→ 調理器具や手の洗浄・消毒をする
2.「増やさない」→ 食材を迅速に冷蔵・冷凍保存する、調理器具・食器を清潔に保つ
3.「やっつける」→ 十分に加熱する (冷蔵・冷凍では菌は死にません)

お子さんには必ず十分に加熱処理したものを食べさせるようにしましょう。加熱を十分にすることで菌が死滅します。また、サルモネラ菌、キャンピロバクターは卵の殻をとおして中身にも入ってしまうので、卵料理にもしっかり火を通しましょう。
 
 
引用・参照:
開業医の外来小児科学改訂5版(南山堂)