なんり小児科クリニック

福岡市東区のなんり小児科クリニックの公式サイトです。【院長】南里月美

ニュースレター5月号「同時接種について」

【 いま流行っている病気は? 】

インフルエンザ、感染性胃腸炎が流行しています。インフルエンザはピーク時に比べると約5分の1に減少しましたが、まだB型が流行しています。感染性胃腸炎はロタウイルスが多く検出されています。
また、溶蓮菌感染症、水痘、伝染性紅斑(りんご病)が増えてきています。いずれも感染しやすい病気ですので、予防にご注意ください。
 
福岡県医師会による感染症発生状況(16週 =H23.4.18~H23.4.24)
病名
報告数
前週比
1定点当たりの患者数
福岡県
全国
インフルエンザ
1867
85%
9.43
6.42
感染性胃腸炎
1347
91%
11.23
8.83
A群溶蓮菌咽頭炎
339
112%
2.83
1.94
水痘
309
95%
2.58
1.34
りんご病
148
113%
1.23
0.69
突発性発疹
108
89%
0.90
0.61
 

 
【 小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンなどの同時接種について 】

2011年4月より、ヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンの接種が再開されました。今月は、小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチン、DPT(3種混合)ワクチンなどの複数ワクチンの同時接種について考えます。
 
◆同時接種のメリット
 ・子どもたちがワクチンで予防される疾患から早期に守られる。
(各ワクチンの間隔をあけて接種する必要がなく、より早く免疫を獲得できるため)
・保護者の方の経済的、時間的負担が軽減する。
(接種を受けにいく回数が少なくて済む⇒病院で他のウイルスをもらうリスクが減る)
・各ワクチンの接種率が向上する。

◆同時接種のデメリット
・重い副反応が増えたという報告はないが、軽い副反応(発熱、注射した部位が赤くなる等)が増えたという研究報告がある。
・もし副反応が起きた場合に、どのワクチンに原因があったのかがわかりにくい。
 

小児用肺炎球菌ワクチン(プレベナー)、ヒブワクチン、DPT(3種混合)ワクチンなどのワクチンは、欧米においては同時接種が通常の方法として広く用いられていますが、日本においては3月に7例の死亡報告を受けて接種見合わせになったために、不安に思われる方も多いようです。

日本において報告された7例は0~2歳の乳幼児で、基礎疾患あり3例、なし4例。接種翌日死亡3例、2日後1例、3日後2例、7日後1例。7例ともワクチンとの明確な因果関係は認められないと評価されています。

一方10年以上前から小児用肺炎球菌・ヒブなど複数接種を行っているアメリカの場合をみてみると、VAERS(Vaccine Adverse Event Reporting System;予防接種有害事象報告制度)で調査したアメリカでの小児用肺炎球菌ワクチン(プレベナー)市販後安全性調査では、2000年2月から2002年2月の2年間にプレベナーは、アメリカで約3000万本販売され、そのうち4154件の副反応が報告があり、副作用発現割合は13.2件/10万本になります。4154件中、重い副反応は491件14.6%で、これは他のワクチンの発現率14.3%と同様でした。

死亡例は117例報告され、男児69例(59.0%)、女児48例(41.0%)で、年齢は0~2歳未満で114例(97.4%)、2~4歳3例(2.6%)でした。約40%はワクチン接種以外の原因が確認されており、約50%はSIDS(乳児突然死症候群)またはその疑い、原因不明は約10%でした。なおプレベナーと死亡との因果関係は不明で、特にSIDSとワクチン接種との関係を見出すことは難しいとコメントされています。

アメリカにおいて、これだけの副反応があったにも拘らず接種の一時見合わせもなく、現在も同時接種(プレベナー・ヒブ・DPT・ポリオ・B型肝炎・ロタなど、7~8種類)が推奨されている理由は、同時接種によるデメリットよりもメリットのほうが大きいと判断されているからです。
 
 
 
【 小児用肺炎球菌・ヒブワクチンの県内無料化について 】 

2011年4月1日より、小児用肺炎球菌・ヒブワクチンが、福岡市だけでなく福岡県全域で無料にて接種できるようになりました。また、居住地以外の市町村でも接種を受けることができます。(たとえば、新宮市にお住まいの方でも、福岡市で接種を受けることができ、その逆も可能です。)
 


引用・参照: